医療とかケアとか

総合診療科専攻医がアウトプットのために作るブログです

慢性骨盤痛症候群

こんにちは、先日外来で診断のつかない骨盤痛を経験しました。

慢性骨盤痛症候群という疾患概念があるようなのでレビューを読みました。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26926975/

Am Fam Physician. 2016 Mar 1;93(5):380-7.

Chronic Pelvic Pain in Women

PMID: 26926975

 

女性の慢性骨盤痛は有病率6-27%とのこと、多いですね〜

今回のケースは産婦人科に行ったが診断が付かずに初診外来に回ってきたケースでした。産婦人科外来だともっと多いのでしょうか。

定義は、「6ヶ月以上持続、持続性の非周期的な骨盤周辺の痛み」で広い症状概念ですね。

原因:

 過敏性腸症候群

 間質性膀胱炎 後述

 子宮内膜症 月経に関連

 骨盤癒着 腹部手術歴、性感染症

 骨盤内うっ血症候群 妊娠出産後に生じる、昼間動くと痛みが生じる。

 骨盤底筋障害 頻尿など他随伴症状

 骨盤帯痛 妊娠の際、特定の動作が障害される

 陰部神経障害 神経痛

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https://www.pelvicpain.org/common/Uploaded%20files/Patient%20Handouts/PUDENDAL%20NEUROPATHY.pdf

 外陰部痛 vulvodynia

https://www.pelvicpain.org/IPPS/Professional/Patient_Handouts/IPPS/Content/Professional/Patient_Handouts.aspx?hkey=4b5d6c87-5797-4a92-b0b4-61846240afb3

 

など、1つまたは複数の合併がある。

慢性局所疼痛症候群、または機能性身体症候群に分類できることもある。

半数の患者では心理的側面に関連している。

 

・間質性膀胱炎

尿貯留で膀胱に痛みが生じ、排尿とともに改善。頻尿。

尿検査では異常なしのことが多い。

膀胱水圧拡張術により新生血管の集まり(ハンナ病変)を確認することで診断となる。

ハンナ病変がない場合には膀胱痛症候群。

治療は対症療法(鎮痛薬、ウラリシッド、アイピーディ(Th2阻害)、竜胆瀉肝湯(ツムラ78番)や猪苓湯合四物湯(ツムラ112番))、焼灼治療、血管内治療など。食事療法(避ける:香辛料などの刺激物、チーズ類、かんきつ類、酢の物、コーヒー、紅茶、チョコレート、アルコール、ビタミンC、カリウムを多く含む食品)人によって異なるので食事内容を記録する。

間質性膀胱炎研究会

http://sicj.umin.jp/about/index.html

 

検査:

感染に関わるもの(クラミジア、淋病、一般採血)

妊娠反応

内診

経腟超音波,MRI

 

治療:

認知行動療法

理学療法(骨盤底筋体操)

プロゲステロン 月経関連の場合有効。月経終了後であればホルモン補充療法、月経ある場合はピル

ガバペンチン

三環系抗うつ薬

ステロイド性抗炎症薬

仙骨神経が関与している場合は、仙骨神経ブロックまたは電気パルスが効果ある場合あり

 

自分が担当した方は、月経に関連し疼痛がやや増悪する経過にあり、ピル内服をして経過観察中です。不定愁訴として総合診療科外来に受診する方も多そうな印象ですがいかがでしょうか?

この疾患概念の存在は知らなかったので大変勉強になりました。